27-30 Jul., 2015, Osaka



MIRU2015

The 18th Meeting on Image Recognition and Understanding

特別講演


特別講演1

神谷之康(京都大学大学院情報学研究科、ATR脳情報研究所)
「脳画像から心を読む」
機械学習を用いた脳イメージングデータの解析は近年急速に普及し、ブレイン・デコーディングと呼ばれる新しい分野を形成している。この方法は、脳画像の多数の画素パターンから心理状態を予測したり、脳・精神疾患のバイオマーカーを作成するために用いられ、単変量解析を各画素で繰り返す従来の手法(mass univariate analysis)からの大きなパラダイムシフトをもたらした。脳イメージング研究は、これまでの脳マッピングや確認分析的な方法論から、予測的な科学に脱皮しようとしているのである。私のグループでは、詳細で多様な心の状態の解読を目指して、機械学習モデルを用いたデコーディング手法の開発を行っている。本講演では、睡眠中の脳活動パターンから夢の内容を解読した研究とその背景となる方法を紹介しながら、脳イメージングにおける機械学習の利用の現状と展望を議論する。

<講師略歴>
1970年奈良県生まれ。東京大学教養学部卒業。カリフォルニア工科大学でPh.D.取得後、ハーバード大学、プリンストン大学を経て2004年からATR脳情報研究所に所属。2008年から神経情報学研究室・室長。2015年から京都大学大学院情報学研究科・教授。機械学習を用いて脳信号を解読する脳情報デコーディングのパイオニアで、ヒトの脳から視覚イメージや夢を解読することに初めて成功した。SCIENTIFIC AMERICAN誌「科学技術に貢献した50人」(2005年)、塚原仲晃記念賞(2013)、日本学術振興会賞(2014年)等受賞。


特別講演2

金道敏樹(トヨタ自動車株式会社BR高度知能化運転支援開発室)
「自動運転技術の今 - トヨタ自動車の取組を中心に」
最近話題になっている 自動車の自動運転技術について紹介します。自動運転技術は、2004年に開催された米国の 国防高等研究計画局(DARPA)が主催したグランドチャレンジをきっかけにブレイクしました。現在では、 自動車メーカーだけでなく、Google等のIT企業も、自動運転技術の研究開発に取組んでいます。 この講演では、グランドチャレンジがもたらした変化と、今の自動運転を支える主な技術について、トヨタ自動車の取組を中心に紹介します。

<講師略歴>
1982年東北大学理学部物理第二学科卒。2年間の高エネルギー物理学研究所 留学を経て、1987年東北大学大学院理学研究科原子核理学専攻修了。日本原 子力研究所、松下電器㈱、松下技研㈱を経て、2004年よりトヨタ自動車にて 自動運転技術の研究開発に従事。1995~2000年新技術事業団独創的個人研究 推進事業(さきがけ研究21)研究員兼務。理学博士。専門は、原子核理論、 ニューラルネットワークを中心とする人工知能、機械学習、情報検索、画像 処理、ロボティクス、HMI、ファクトリオートメイションの最適化。


特別講演3

乾 健太郎(東北大学大学院情報科学研究科)
「「行間を読む」自然言語処理への挑戦 〜知識、学習、推論、そしてグラウンディング〜」
自然言語処理は、この20年で発展した統計的手法の成功によって長足の進歩をとげた。しかし、実用化した技術はいずれもバラバラな文から表面的な情報を抽出し、加工しているに過ぎない。文章の文脈的な繋がりを認識して「行間を読む」深い言語理解を実現するにはまだ多くの技術革新が必要であろう。良いニュースは、これまで最大の障壁に見えていた「知識獲得のボトルネック」が大規模言語データからの言語/世界知識の自動獲得によって解消される可能性が見えてきたことだ。近い将来に広範な常識的知識を含む巨大な知識ベースが利用可能になるとすると、その先の課題は何か? 知識獲得、表現学習、常識推論、そして言語と画像の統合理解へと進む自然言語処理のフロンティアを紹介しながら今後の展開を考える。

<講師略歴>
東北大学大学院情報科学研究科 教授。専門は自然言語処理、人工知能。1995年東京工業大学大学院情報理工学研究科博士課程修了。博士(工学)。同大学助手、九州工業大学助教授、奈良先端科学技術大学院大学助教授を経て、2010年より現職。2014年度情報処理学会論文誌編集委員長、同年度より同学会自然言語処理研究会主査。人工知能学会論文賞、COLING/ACL最優秀Asian NLP論文賞、言語処理学会20周年記念論文賞、同学会年次大会最優秀賞等、受賞。