[image 04862] コンピュータ画像処理(改訂2版)のご案内

Hideo Saito saito @ hvrl.ics.keio.ac.jp
2022年 10月 18日 (火) 11:04:44 JST


image-ml の皆様

慶應義塾大学の斎藤英雄と申します。

画像処理の書籍の案内/紹介です。

 田村秀行,斎藤英雄(編著)
 『コンピュータ画像処理(改訂2版)』オーム社 (2022)
https://www.ohmsha.co.jp/book/9784274228193/

私(斎藤)は,改訂前の著者の先生方が中心になって行われる改訂執筆作業に,第3者的視点で改訂作業に参加したことで編者となっています。この場をお借りして,本書のご案内をさせていただきます。

【誰に向くか,誰に紹介したいか】
画像処理・認識が広く社会で活用されるようになったことから,多くの分野で,画像処理・認識技術を基礎から勉強したいという方が増えたように思います。最新の論文や研究動向解説記事はネット上から簡単に入手できる時代になった半面,基礎からの技術体系をきちんと解説した日本語の書籍は少なく,上記は自信をもって勧められる技術書になっていると自負しています。

また,最新の開発環境で画像処理・認識等のプログラム開発をする際にも,その基幹技術体系の把握する必要もあると思います。このようなときの指定図書にも適しています。

【本書の成り立ちと経緯】
・元は,田村秀行(監修)『コンピュータ画像処理入門』(総研出版,1985)で,当時から当該分野の「生き字引」と言われた田村先生(当時,電総研)が,故松山隆司先生の他,金子正秀先生,横井茂樹先生等の錚々たるメンバーを率いて実施された講習会テキストを単行本化されたものだそうです。基礎概念,代表的手法,システム構成要素,主要な応用がバランスよく配分されていて,まさに「総合入門書」でした。1980年代後半から90年代にかけて, 
この本で画像処理を学んだ人は多く,私(斎藤)もその1人です。
・同書の後半は時代とともに大きく進歩したので,「システム」「応用」は廃し,前半だけを充実させて教科書化されたのが,『コンピュータ画像処理』(オーム社,2002)で,本書の旧版(初版)です。これが出版された当時は「10年以上の利用に耐えるように」と配慮されていたとのことですが,実際には19年以上も全国各地の大学で採用され,18刷を数えるロングセラーになりました。
・入門用の教科書だとしても,さすがに20年弱前の本は内容的に古く,この間の技術進歩や最近の話題を盛り込む必要があり,出版社からの要請で改訂作業が始まりました。

【改訂版の趣旨と価値】
・約20年間の画像処理・認識,コンピュータビジョン分野の研究的進歩は大きく,それらをそのまま付加すれば,約2倍の厚さの書籍になります。そうした英語の書籍は海外に何冊もありますが,日本の出版事情,大学の授業の教科書として成立するには,頁数はほぼ同じ,価格据置が絶対条件という制約での改訂作業となりました。
・この制約の下で「さらに10年もつように」するには,研究テーマとしては最新でも,10年後に生き残っているかの予想・判断が必要です。それ以上に難しかったのは,新規追加分だけ,旧版の頁数を削減する作業です。例えば,深層学習以前の画像認識技術をどの程度語るのか,等の選定作業はかなり真剣に行われました。1985年版,2002年版,この改訂2版の3冊を揃えて見比べれば,画像処理・認識の歴史,進化過程を辿る材料になるかと思います。
・手法や話題の取捨選択だけでなく,技術用語に関しても徹底的に見直しされました。ネット上で安易に使われている用語は避け,代表的教科書として推奨できる用語が選ばれています。これは当該技術の黎明期からの変遷を知り,自ら授業を担当されてきた先生方にしかできない改訂であったと感じました。

【なぜ今,ご案内しているのか】
・本改訂版は,新学期に間に合うよう今年の2月末に出版されています。それを半年以上経った今広報しているのは,授業を担当し,教科書採用される先生方に提供する図・画像のデータセットを提供できる準備ができたからです。来年度授業のシラバス作成,教科書指定に間に合うように,この時点でのご案内となりました。データセットを必要とされる方は,出版社までご連絡頂頂けますと幸いです。

斎藤英雄/慶應義塾大学
-- 
Hideo Saito, Ph.D.
Professor
Dept. of Information and Computer Science, Keio University
http://www.hvrl.ics.keio.ac.jp/


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