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機械学習を用いた脳イメージングデータの解析は近年急速に普及し、ブレイン・デコーディングと呼ばれる新しい分野を形成している。この方法は、脳画像の多数の画素パターンから心理状態を予測したり、脳・精神疾患のバイオマーカーを作成するために用いられ、単変量解析を各画素で繰り返す従来の手法(mass univariate analysis)からの大きなパラダイムシフトをもたらした。脳イメージング研究は、これまでの脳マッピングや確認分析的な方法論から、予測的な科学に脱皮しようとしているのである。私のグループでは、詳細で多様な心の状態の解読を目指して、機械学習モデルを用いたデコーディング手法の開発を行っている。本講演では、睡眠中の脳活動パターンから夢の内容を解読した研究とその背景となる方法を紹介しながら、脳イメージングにおける機械学習の利用の現状と展望を議論する。
<講師略歴>
1970年奈良県生まれ。東京大学教養学部卒業。カリフォルニア工科大学でPh.D.取得後、ハーバード大学、プリンストン大学を経て2004年からATR脳情報研究所に所属。2008年から神経情報学研究室・室長。2015年から京都大学大学院情報学研究科・教授。機械学習を用いて脳信号を解読する脳情報デコーディングのパイオニアで、ヒトの脳から視覚イメージや夢を解読することに初めて成功した。SCIENTIFIC AMERICAN誌「科学技術に貢献した50人」(2005年)、塚原仲晃記念賞(2013)、日本学術振興会賞(2014年)等受賞。 |